Pet Dog Training TIPS Vol.3
<2005>No.7
ある科学者による犬のトレーニングの見方
マーク・プロンスキー博士はウィスコンシン州にある大学の教授です。彼が犬のトレーニングについての考えを4つの科学的項目にわけて書いたエッセイを要約してみました。

1.生物学的見地

 犬の体内で何がおきているのかを生物学的見地からみることです。この中では犬が世の中をどう見ているかの分析もしています。

感覚の構造:犬の感覚は人間のものとは異なります。そのため彼らは世界をまったく異なる目で見ているでしょう。

行動に影響する内分泌物:ホルモンが行動に与える影響に関する研究により、避妊・去勢の効果により深い見解が出されるでしょう。

行動的な遺伝:行動は複雑で親から受け継いだもの(遺伝)の結果と環境(学習)によります。

進化:犬の祖先はオオカミだという議論があります。もしそうであるならば、オオカミの行動を研究することは、犬の行動を理解するために役立つでしょう。自然な環境の中でのオオカミを研究することを動物行動学といいます。

2.社会的見地

 社会的見地とは、ある動物の行動が、他の動物にどう影響を与えるかということです。犬がとる体の形で、その時の感情や考えているが大変よくわかります。同時に犬達も、私達の感情や考えていることを「読んで」いるのです。ですから私達は、自分の姿勢、表情、動きにきをつけなければいけません。

  「刷り込み」とは、犬が幼い頃に経験したことが、その後成犬になってもその行動に長く影響を及ぼすようなことを言います。この現象は、愛情(絆)と関係する部分にもっとも顕著にみられます。子犬がどのように扱われるか、どういった環境に置かれるかということが、成犬の行動に影響を与えるということになります。

3.行動的見地

 行動的な見地では、行動する環境(学習)が主になります。学習は主に2つの形に分けられます。古典的とオペラントです。学習理論の専門家達は、この2つの間に明確な違いがあるのかということを論じあっています。なぜならこの2つにはそれぞれオーバーラップする部分が多く、共通の部分もあるからなのです。

オペラント条件づけといわれているもの:「行動はその結果による機能」。つまり犬が何か行動をした後に起こったことが、その行動が将来再び起こるかを決定するということです。例えば、犬がある行動をして、何か好きなものが与えられれば(食べるものや遊びなど)、その後もその行動を再び起こす可能性があるということです。

古典的条件づけとは、生物学的に重要なもの例えば食べるものや痛みなどが与えられる前に、現れるものと関係があります。食事を与える前に常にベルを鳴らしていると、犬はそのベルで唾液がでるようになります。言い方を変えれば、犬の体が、あたかもそのベルが食べ物であるかのように反応を始めるということなのです。このように、犬の生活の中で起きる事を意図的に行うことで、犬が何をどう思うかということに影響を与えることが可能なのです。「系統的脱感作」は、怖がりの犬に使われる古典的条件づけの手法です。

4.知的見地

 知的見地というのは心理学的な見方で、犬が情報を処理する生物であるという考え方です。予期する、コントロールする、期待するなどは、この見方にとって重要な要素となります。よく知られているのは「学習性無力感」と呼ばれる現象ですが、この見方にそって考えると容易に説明できます。

  学習性無力感とは、犬が自分ではコントロールできない状況で不快な事を経験し、再び状況をコントロールできるようになるまでに、非常に難しい学習過程を体験すると起こります。つまり、自分の理解できない不快な経験を重ねると、いわゆる「シャットダウン」状態になり、何か新しいことを学習するのが難しくなってしまうのです(おそらく古典的条件づけを用いた恐怖はこれに含まれません)。理解できない不快な出来事にさらされていると、犬は「何をしても無駄」と学習し、その考えを持ち続けるため、新しい環境で学習するという能力に影響を与えてしまうということです。知的見地と行動的見地の2つ(認知と行動)を併せることが心理学では、よく行われるようになってきました。




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