Pet Dog Training TIPS Vol.2
<2004>No.14
画像で考える

 この秋にデンバーで開催されたAPDTミーティングで興味深い人に会いました。テンプル・グランティン博士という学ぶことへの大きな障害を乗り越えた中年女性です。彼女は動物科学者です。そして自閉症です。困難の多い子供時代を過ごしましたが、現在は動物の健康福祉に関する有名な先生です。これまでに数々の賞を得ており、テレビにもしばしば出演しています。自閉症の人たちは、私たちとは異なる考え方をします。犬は自閉症の人たちのように、物事を映像化して考えるという情報があります。犬は情報を処理するけれども、おそらく人間のように「考える」ことをしないと私たちは知っています。これはテンプル・グランディン博士の情報です。この特殊な考え方の過程に関する説明を読みながら、自分の犬のことを考えてみてください。犬も同じように考えているかもしれません。グランディン博士は自閉症の人間として、犬がどう考えるかに結びつけることができると言います。
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 「私は言葉では考えず、画像で考えます」物事を考えるとき、スライドやビデオのように考えが次々と頭に浮かびます。感覚で考え、言葉や言語には頼りません。私にとって言葉は第2外国語のようなものです。誰かが私に話しかける時、その言葉はすぐさま画像に訳されるのです。言語ベースで考える人には、この現象は理解しがたいかもしれませんが、家畜産業の用具デザイナーである私の仕事において、画像で考える事は大きなアドバンテージになります。システム全体を頭の中で画像で作り上げることができるのです。私がこれまで仕事を請け負った人達の多くは彼らのシステムを考えたのが自閉症の人だとは思いもよらないでしょう。私はこういった考え方ができることに価値を感じており、決して失いたくないと思っています。

 動物も同じように考えているはずです。なぜなら彼らも言語を持たないから。記憶は、特定のイメージ、音、匂い、感触または味覚で残るはずです。私は子供の頃から10代まで、すべての人は画像で考えるのもだと思っていました。私の思考回路が他人と異なるものだとは思っていなかったのです。実際、つい最近まで完全にその違いを理解していませんでした。ミーティングや仕事などであう人々に、どうやって記憶の中の情報にアクセスするのかを尋ねはじめました。その答えから、私の画像で考えるスキルが他の人々よりかなり優れていることがわかったのです。そのスキルが、私の扱う動物たちを理解する助けになっていることは確実です。

 私の記憶の中で、一般的な犬のイメージというのはありません。何頭か特定の犬のイメージがあるのです。犬と猫の違いを理解するには、すべての犬に同じである視覚、音、匂いなどの特徴を見つけださなければなりません。例えば、犬はすべて同じタイプの鼻を持っています。私にとって犬は、頭部に穴がふたつあいたなめらかな円形の皮膚、なのです。こうやって少しずつ犬のイメージを作り上げていくのです。ほとんどの人は全体を考えてから、違いに目を向けます。つまり、犬がいます。そこから背が高いとか斑点があるとか、ワンとミャオ〜の違いを見ます。私の場合は反対です。鼻があります。そこに違いを識別するための断片を加えていくのです。犬の鼻の高さが、一般的な猫のものと同じであれば、私には識別が困難になります。犬が丸い頭と立ち耳だったら、私は簡単に猫と間違えてしまうでしょう。

 私にはもうひとつ動物に関連づける理由があります。自閉症の人と動物に共通するのは、恐怖が主な感情ということろです。私の個人的な経験と動物を扱ってきた長年の経験からのアドバイスですが、何か新しい物事に対する初めての経験は、必ず恐怖や痛みの伴わない良いものにしてください、ということです。こうすることで恐怖の記憶を防ぐことができます。恐怖に関する記憶は、特定の画像、音、感触で残るのです。
 これは子供時代にストーブに触れてしまった経験です。自閉症の子供は、取っ手というものに対し一生恐怖を感じるかもしれません。しかし、実際に傷ついた原因は取っ手ではありません。実際にはバーナー部分です。自閉症でなく、物事を大きな画像として捉えられる人は取っ手を怖がることはないでしょう。自閉症の人、そしておそらく犬も小さな断片を覚えていて、適切な関連づけをするために、小さな記憶の断片をまとめていかなければならないのです。これがなぜ犬がトリミング台に乗るのを怖がるのかの理由です。テーブルそのものが痛いのではなく、テーブルに乗るとブラシをかけられ、そのブラシにより皮膚が痛みを受けるからです。おそらく自閉症の人々の考え方は、犬を理解するのに役立つでしょう。

テンプル博士の著書
「Thinking in Pictures and Other Reports from my Life with Autism」1995年 DoubleDay, New York


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