Pet Dog Training TIPS Vol.1 VOL.11
2003
行動学と学習理論に用いられる専門用語

 インストラクターであれ飼い主の立場であれ批判的なものの見方というのは持つべきです。専門家が書物にしている、またはそう言っているというだけで、それが正しいとか科学的に証明されているとか、さらには役立つことだとは限りません。私達が話す言葉もそうです。ひとつの言語だけでいっても行動学や学習理論に用いられる用語というのは複雑で、混乱を招きやすく、あいまいで、しばしば間違って使われることがあります。最近頻繁に使われるようになった言葉ふたつと、もっとも一般的に受け入れられているその言葉の定義をご紹介しましょう。

メタコミュニケーション

 「プレーバウ」という用語を使うときほとんどの人の頭の中には同じイメージがあります。しかし実際には犬が正確に何を伝えようとしているのかの証明はされていません。「遊ぼう」以上の意味があるように思われます。

illustrationプレーバウ
 ある行動学者らによれば、「さぁやるぞ」という姿勢だといいます。プレーバウの姿勢を解説する時しばしばメタコミュニケーション・シグナルという用語が使われます。遊ぶという意思は、音、表情、姿勢などさまざまなものから判断されます。このような遊びの誘いは、かまってほしいそして積極的な服従行動にみられるような儀式化された共通認識のパターンです。

  ベイトソン(1976年)は、こういったさまざまな予備的メッセージはメタコミュニケーションの形であると表現しています。つまり、受け手が次に続く行動を正しく解釈できる情況を作るためのシグナルなのです。遊びに誘う時、このようなさまざまなメッセージを通じ、実際には遊びという行為だけなのだということを相手に(そしてあるいは送り手側も)伝え安心させるのです。ベイトソンによれば、こういった予備的(メタコミュニケーション)シグナルは次におきる出来事を伝えるためのものだということです。
資料: Handbook of Applied Dog Behavior and Training.
Volume Two - Steven R. Lindsay, Iowa State University Press 2001

筋肉記憶(マッスルメモリー)

 最近犬のトレーニングで人気の高い書物では「筋肉記憶」という用語が使われています。作家、講演者、トレーナーはこう言います−「エクササイズをする時は、犬の体の筋肉が記憶し自然にきでるまで何度も繰り返して行う必要があります」実際に、筋肉に記憶はとどまりません。エングラムと呼ばれる、よくする運動筋肉の動きのパターンの発達と蓄積により学習されたものなのです。クリス・ジンク博士は、彼女の著書「Peak Performance, Coaching the Canine Athlete」の中でこう語っています。「産まれたてのすべての子犬が最初に動き始める時、その動きに関する情報を脳内の特定の神経経路へ送り始めます。この神経経路がエングラムと呼ばれるのです。これは脳内にできる情報が好んで通る轍のようなものです」ですから、エクササイズを繰り返し行う必要があるというのはその通りです。ただそれが、筋肉に記憶させるためでなく、脳内に情報の通り道を作るためなのです。これによりさらにパピートレーニングの重要性が立証されます。

 飼い主に物事を伝える時「言葉ゲーム」に陥らないようにしてください。あなたが何を言おうとしているのかが聞き手にきちんと伝わるような表現を用いデモンストレーションも行います。最適な方法のひとつは、今自分が教えた事を生徒に繰り返し彼自身の言葉で言わせてみることです。


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