Pet Dog Training TIPS Vol.1 VOL.3
2003
 犬にお仕事を与えておきましょう、飼い主に集中させておきましょう。これは長年自分のクラスの生徒に私が言い続けてきたことです。これが特に大切なのは犬が集まる最初の機会となる第1回目のクラスです。

犬のトレーニングと
神経学の関係


 クラスの中に過度に興奮している犬がいる時の良いエクササイズをご紹介しましょう。飼い主に席を立ってイスのまわりを歩くよう促します。イスのまわりを回りながら「ステップ−ステップ−オスワリ」つまり2歩あるく毎に、犬にオスワリをさせるのです。
 1周またはそれ以上続けます。犬同士がお互いに近づきすぎることのないよう、クラス開始前にイスを適当な間隔で配置しておく事は必須です。
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 犬なしで行うオリエンテーション時に生徒となる飼い主さん達にマグネットゲームの宿題を出しておきます。このマグネットゲームというのは犬の頭の向きをフードで誘導する、つまり鼻とフードがマジックテープで一体になったような形です。事前にこの方法を伝えておくだけで、ほとんどの飼い主が初回の犬連れのクラスでは犬のコントロールを取れるだけでなく、飼い主に集中させておくことが出来るようになっています。

 実際に席を立って体を動かすことでリーダーである飼い主に注意を向けさせ、環境をリーダーがコントロールする状況を作れます。もう一つの良い点は犬が筋肉を動かす事。これは緊張したり不安を感じている犬にはたいへん役に立つのです。また飼い主も「あぁ、どうしよう。うちの犬はまったく落ち着かない」とばかり考えずにすみます。

 イスのまわりを歩くことで、人間も犬も普通に呼吸ができます。犬というのはまわりの人間や犬が呼吸を止めているとすぐにそれを察知するものです。ストレスの表れですね。ストレスのかかった飼い主は自分の犬の事が非常に気になってしまうものです。これより今ご紹介した方法が、犬をコントロールするためになぜ役立つかという脳内化学作用の理由をあげます。

犬の脳:大脳辺縁系と大脳皮質

 この2つは脳内の細胞ネットワークで、その働きは本能と学習を統合するものです。犬が本能的にしたい事と私達が犬にするように教えた事の葛藤が脳内で起きています。これは本能にではなく人間に従ったことに対してご褒美を与えることで、優先順位をつけられます。

 大脳辺縁系は恐怖心など情緒に関与し、大脳皮質は学習や問題解決などの認知機能に関与します。これらのうち片方が有効になるともう片方の働きが抑制されるのです。
「ステップ−ステップ−オスワリ」のような精神的刺激のある状況では、大脳皮質が働いています。つまりこの状態では、恐怖心のような強い情緒反応を感じにくくなるのです。例えば「ステップ−ステップ−オスワリ」のエクササイズで、飼い主と共にイスのまわりを歩くことに集中している犬は、クラス内の他の犬達と接近した環境にもあまり興奮を感じずにすむということです。

 インストラクターとしては逆のケースも知っておく必要があります。すでにクラスのある犬が過剰な興奮を示しているのであれば、これは大脳辺縁系からの行動で、同時に情報を処理する能力を発揮するのはほぼ不可能です。こうなってしまった後ではイスのまわりを歩いて座るという一連の行動について犬が考えることは無理で、引きずり回すだけという意味のない結果に終わってしまいます。すべてタイミングが肝心なのです!

 しつけ方教室で良い学習環境を飼い主さんに提供できるかは、インストラクターの皆さん次第です。犬を読み人間に教えることに精通するのは非常に重要な事なのです。


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