Pet Dog Training TIPS Vol.3
<2005>No.2

犬の視力

 犬をトレーニングする時ですが、私達人間が体験している世界と犬が体験している世界とは大きく異なることを忘れてはいけません。嗅覚も聴覚も優れています。視覚も私達のものとは異なっています。ほとんどの犬の目線は私達人間の目線より地面に近いです!そのため私達が見ている世界とは違うはずですね。犬の見える世界を体験するためには、肘と膝をついて四つんばいになり、床から犬と同じ距離でものを見てみましょう。周りを見回してください。いろいろなものが目新しく見えますね!もうキッチンのカウンターの上に何があるかは見えないはずです!扉の敷居で光っているもの、イスの下のほこりが見えますね。犬がどの角度でものを見ているかは、私達のそれとは大きく異なりますね。ある時は私達よりすぐれ、ある時は犬のほうがすぐれています。異なる種として進化の過程をたどってきたので、それぞれの種が生き残っていくのに最適な方法をとるようになったのでしょう。

 夜間の視力と動くものを見つける事に関しては犬のほうが人間よりもずっと優れています。一般的に人間と比べて、犬には物が明るくみえますが、細かい部分は見えにくいのです。犬の網膜は主にグレーの影で見えるロッドと呼ばれる細胞でできていますが、人間の網膜は主にコーンと呼ばれる細胞でできています。コーンに比べてロッドは少ない光でも機能するため、暗い中でも犬には人間より物が良く見えるのです。また、人間にはありませんが、網膜の後ろに反射する面があります。それはタペータム脈絡網と呼ばれています。どんなに少量の光でも目を通って反射するのです。犬の目が夜光ってみえるのは、このためです。怪しげにも見えますが、暗い中でも良く見える昨日を果たしているのです。

 犬には人間に見える色の範囲の一部しか見えません。人間は3原色を見ることができますが、犬には2原色しかみえません。緑の赤の差がわからないのです。犬には主に黄色と青色が見えます。人間の表現を使うと色盲ということになります。色盲は人間の男性に4%の確率で起こるといいます。

 犬は人間より動くものをよく見ることができます。進化する過程で食べ物として必要だった隠れている動物を見つけるのに役立ったでしょう。また、隠れている自分に対しての敵の小さな動きも見逃さないため必要だったでしょう。視覚の正確さは人間よりも劣ります。物の形を上手に見極めることができないのです。人間にははっきりと見える距離でも犬にはぼやけて見えます。おおよそですが、犬の視力は20/75、人間が完全に見えるときは20/20といわれています。これはどういうことかというと、物がはっきり見えるための距離が、人間が75フィートだとすると、犬は20フィートということです。

 また犬の目の位置を人間のそれと比べてみると、より周囲のものが見えやすくなっています。人間の目は、犬とは違い中央に寄っています。犬は人間に比べ左右幅広く見えます。つまり犬は幅広く見ることができますが、人間は見えるものについては、犬に比べてはっきりと対象物を認識できるということです。この視覚の差は人と犬の進化の過程での違いを考えるとよくわかります。霊長類にとって正しい距離を測ることと、見えるのものの正確さというのが、木の枝から別の枝に移動するには必要でした。色をしっかりと見分けるのも霊長類の祖先にとって、最も熟していて栄養のある果実を見分けるのに役立ったでしょう。一方犬類の物の見え方は夜行性のハンターとして獲物を得るのに役立ちました。

 犬が「何もない」はずのところにむかって吠えることがあったら、人間とはものの見え方が違うんだということを考えてみてください。あなたには何もみえなかったかもしれないけれど、犬には見えたのかもしれません。犬と人がお互いに役立つ良い関係を保ってきた理由のひとつかもしれませんね。

FACTS, RESEARCH
マーク・プロンスキー博士


Return GO TOP
(c)copyright 2005 LEGACY JAPAN, All rights reserved.
〜文章および画像の無断転載・複製を禁じます〜